税務署はどこをチェックするのか
税務調査は本当に入るの?
相続税は申告して終わりではありません。申告して数年後に、相続税申告をした方の実に4分の1の人に対して税務調査が入ります。
さらに税務調査に入った件数の8割以上という高い確率で、修正が入り追加で税金を支払う必要があります。
相続税の税務調査とは
税務調査の内容
相続税の税務調査は、「相続税を正しく申告したか」をチェックするために税務署が行うものです。
税務署は、相続に関わるさまざまな情報を入手することができます。
例えば、
預貯金の流れ
不動産の保有状況
株式や国債などの保有状況や履歴
生命保険
などです。
相続税の申告内容とこれらの情報との間にズレがないかをチェックして、疑問や不審があると調査に入ります。
一般的な調査は任意調査といい、調査対象となる人に対して事前に税務署から連絡があり、調査日時を決めて行われます。
場所は、被相続人(遺産を遺して亡くなった人)が最後に住んでいた自宅で行われることが多いです。
その場には、できれば相続人全員、それが無理であればなるべく多くの相続人を集めて、税理士にも立ち会ってもらうことができます。
調査自体は、税務署員からの質問に対して相続人が答え、場合によっては通帳や土地の権利証などの書類を確認します。
無理やり見られたくない部屋を家捜しされるようなことはありませんので安心してください。
ただ、「任意」調査ですが、基本的には断ることはできません。
税務署はどこをチェックするの?
税務署が指摘する修正事項は、特に預貯金などの金融資産に関してが大半を占めます。
税務調査は基本的には、事前に税務署から通知が来ます。相続税の申告を税理士に依頼している場合には、申告書への押印のある税理士へ事前に電話が入ることがほとんどです。
通常は申告を依頼した税理士に対応して貰えば良いのですが、中には税務調査の経験が浅い先生や相続税申告をほとんど行ったことのない先生がいらっしゃいます。
そのような先生のお世話になっている場合には、別の税理士に依頼されるというケースが最近では多くなってきています。税理士の中には「税務調査は別の税理士に依頼してほしい」とい方までいらっしゃるようです。
当相談室では、税務調査のみのサポートにも対応しております。相続税申告の経験も豊富ですので、まずはご相談下さい。
税務調査が入りやすいケース
1.申告書に不備がある場合
申告書に計算ミスや記載間違い、添付書類不足などの不備があれば調査されます。税務署は、亡くなった被相続人の預貯金や不動産など、財産とお金の流れを細かく把握していますので、その内容と申告された相続財産に違いがあれば、ミスや財産隠しを疑われてしまうのです。
2.相続財産に預貯金や現金が多い場合、その出入が多かった場合
相続財産に不動産が多い場合に比べると、預貯金が多い場合の方が、税務調査が入りやすいものです。
また、預貯金の出金や入金回数が多い場合も、調査の対象になります。
理由はいくつかありますが、まず不動産は評価額の算定が複雑なため「解釈の違い」が焦点になりやすく、明確な申告漏れを指摘しにくい傾向があります。
それに比べて預貯金は金額がはっきりしているため、申告漏れを見つけやすいのです。
また、預貯金の出入りが多いと、被相続人が生前に相続税対策として財産の移転をしていたのではないかと疑われます。
あるいは、何かを売買していたか、個人間でお金の貸し借りをしていた可能性も考えられますが、これらは遺族でも把握できない場合が多く、知らずに申告漏れしていることがあるため調査されやすいのです。
特に貸付金は、返済されていなくても債権として相続財産とみなされますので、申告していないと追徴課税の対象になってしまいます。
3.名義預金や暦年贈与が多くある場合
被相続人の配偶者や子ども、孫などの資産に不審な点があると、それも税務調査の対象になります。
特に多いのが、名義預金と暦年贈与についての調査です。
「名義預金」とは、被相続人が配偶者や子ども、孫などの名義で開設した口座のことです。
たとえ名義が違っても、通帳や印鑑を被相続人が管理していたり、名義人自身が自由にお金を出し入れすることができなければ、それは実質的に被相続人の財産であるとみなされ、相続税の申告が必要です。
専業主婦である妻や学生である子どもなど、収入が少ない相続人の預貯金が多ければ、名義預金ではないか、あるいは生前贈与を受けていたのではないか、と疑われて調査されるのです。
もし名義預金がただの申告漏れではなく、意図的な隠し財産とみなされれば、重加算税として多額の追徴課税が課される可能性もあります。
また、生前贈与には毎年110万円までなら非課税という基礎控除があり、これを利用して少しずつ長期間にわたって生前贈与をするという節税方法があります。
「暦年贈与」と呼んでいますが、これが毎年規則正しく繰り返されていると、税務署から「最初から多額の贈与をするつもりだった」と判断され、一括贈与と同じ贈与税を求められてしまう場合もあります。
4.税理士に依頼せず自分で申告した場合
税理士に依頼せず、自分で申告した人も調査されやすい傾向があります。
相続税の申告は、専門家でなくても相続人本人でできますが、書類の種類が非常に多く、計算間違いや財産の見落としなどが起きやすくなっています。
特に、土地の評価額は、場所や地形などによって判断が難しいものです。
そのため、自分で申告した場合には、よりチェックが厳しくなり、ミスを疑われる可能性が高くなるのです。
一方で、税理士に依頼した申告書には、税理士の署名が入るため信頼度が高くなり、調査される確率は下がります。
5.無申告の場合
計算の結果、相続税が発生しなかったために申告をしなかった、無申告の人の場合であっても税務調査が入る可能性があります。
相続税にはさまざまな控除や特例があり、それらを適用した結果、相続税はゼロになるケースがよくあります。
例えば、相続税には基礎控除があって、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」までは非課税です。
相続財産の総額がこの金額以下であれば、申告は必要ありません。
他にも配偶者であれば1億6,000万円まで控除されるなどの制度があります。
が、そもそもこれらの控除や特例が正しく適用されておらず、計算ミスや見落としがあったため、実は相続税が発生していた、というケースもあります。
また、相続財産自体に見落としがあって、それを合算すると相続税が発生する、という場合もあるのです。
税務調査されないための対策
正しく申告する
まず大前提として、正しく申告することがもっとも有効な回避法です。
相続財産の見落としがないよう、すべての財産を調査・把握する
計算ミスがないか、複数回にわたって検算する
以上2点に気をつけて申告しましょう。
相続税申告に強い税理士に依頼する
相続税の申告は自分ですることもできますが、税理士に依頼したほうがより税務調査されにくくなります。
プロである税理士の申告であれば、ミスや漏れは少ないからです。
申告書には税理士の署名も入りますので、それがあれば税務署からの信頼度はグッと高まります。
ただし、税理士といっても専門分野はさまざまで、中には相続税申告の経験が少ない人もいます。
依頼するなら相続税申告に強い税理士を探しましょう。
被相続人の財産を把握しておく
相続税の申告漏れが起きるのは、多くの場合、亡くなった被相続人の財産を遺族が把握していないことが原因です。
配偶者も知らない預貯金口座や、高価な収集品があったり、知人とのお金の貸し借りをしていたり、被相続人名義の賃貸アパートの家賃収入などを本人が握り込んでいたりするケースはよくあります。
そうなると、相続財産をすべて洗いだすのは大変な手間ですし、見落としが生じるリスクも大きいでしょう。
生前からどんな資産がどれくらいあるのか、口座はどれかなど、財産全体を家族が把握しておけば、申告漏れは防ぐことができるはずです。
生前贈与した場合は証拠を残しておく
相続税対策として、生前贈与で財産を先に配偶者や子どもに分けておき、相続財産をできるだけ少なくするという方法があります。
これを行う場合は、「生前贈与である」という証拠を必ず残すことが大切です。
例えば、現金を手渡しして贈与してしまうと、贈与の証拠は残りません。
大金が引き出されているのに、それが贈与だったことが証明できないと、税務署に不審に思われて調査されるリスクが高まってしまいます。
贈与は銀行振込で記録を残す、相手が家族でも贈与の契約書を作るなど、生前贈与の証拠を必ず残しておきましょう。
相続に関するやりとりは形に残しておく
相続について、被相続人や遺産をもらう相続人との間で何かやりとりをする場合は、口約束ですませずに必ず記録に残すことも大切です。
遺産を分割する際に、誰がいくらもらうのか、何をもらうのかによって、相続人一人ひとりが納める相続税額が決まります。
この過程についてやりとりの記録が残っていれば、正しい額を納めたことを明確に証明でき、税務署から疑われるリスクを下げることができます。
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